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シリーズ「Auditory Illusion in Music」と「Musical illusion」では、音楽におけるさまざまな錯聴をご紹介します。聴こえ方のトリックをうまく取り入れた音楽(作品)の分析や、効果のしくみの解説とともに、テーマごとにその効果を応用した新作を発表していきます。シリーズ「Music lab」では、音楽の様々な現象を音楽理論の視点から、新作や豊富な例で分かりやすく解説していきます。



Musical illusion

MUSIC 2018.4.23

Musical illusion

- Siren -

Leonid ZVOLINSKII


「交差による旋律の統合」のイリュージョンは声部が並行して動いている感覚を生み出します。脳は2つ、あるいはそれ以上の声部を集積し、統合します。その結果として、客観的には楽譜にも実際の演奏にもないメロディが主観的には聴こえることになるのです。「Siren(セイレーン)」の例を聴いてみましょう。イリュージョンが隠れているのがわかるでしょうか。

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MUSIC 2018.8.16

Musical illusion

- Compliment -

Leonid ZVOLINSKII


この曲例は、沢山の音の中から必要な音として選択された任意の音に集中することができるという、私たちの聴覚の能力を実証するものです。曲のタイトル «Compliment» は、«complementary»という言葉から、言葉遊びで付けたものですが、作品の気分を反映しているだけではなく、作曲にあたって用いたテクニックを暗に示しています。コンプリメンタリー、つまり相補的な原則が曲全体に浸透し、複数のリズムがモザイク状に融合されて全体的なリズムを形作っています。同様に、それぞれ異なるロジックで作ったハーモニーを持つ楽器たちが織り合わさって、全体のハーモニーが生成されています。

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MUSIC 2018.8.16

Musical illusion

- The Dream of Flowers -

Leonid ZVOLINSKII


今回はコンテクストを持つ芸術としての音楽についてお話したいと思います。 音楽は時間の中で動くもので、絶えずそれぞれの具体的な瞬間や場面までと、その後に鳴り響くものというコンテクスト(脈絡、文脈)の中に存在するものです。それは音楽の水平とよばれる時間軸で、そこでは出来事自体のみならず、その秩序も作品全体の印象を形作ります。まさにこの効果のおかげで、時には長調の音楽も大きな悲しみとして感じられることもあります。例えば、チャイコフスキーの交響曲6番の1楽章の最後を思い出してみましょう。それ以前に出てきた全てのドラマチックな衝突を背景として、全体としては、勝利というよりも、この音楽の「主人公」との明るくも悲しい別れとして感じられます。この部分だけを聴くならば、何倍も喜びに満ちて感じられるはずです。

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MUSIC 2019.4.8

Musical illusion

- Stream -

Leonid ZVOLINSKII


今回の作品は、曲の主要なアイデアとなったStream Segregation(音脈分凝)から取って”Stream”と名付けました。Streamは「流れ」という意味ですが、本作では「音脈」、ここでは音楽の文脈を表しています。音の高低差(周波数差)の広がりによって、音の脈絡が二つのラインに分かれたり、一つのメロディとして統合されて聞こえたりする錯聴効果を利用しています。

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MUSIC 2019.10.2

Musical illusion

- Birds -

Leonid ZVOLINSKII


本作は、冬に別れを告げ、春を迎えるマースレニツァという儀礼のためのロシア民謡を基にしています。 春の鳥たちが飛んで来ると、人間の声は自然の中に溶けて最後には鳥の歌だけが残ります。 人の歌から鳥の歌へ、モーフィングを適用した作品になっています。

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MUSIC 2020.3.24

Musical illusion

- Ikarus -

Leonid ZVOLINSKII


ロジャー・シェパードというアメリカの心理学者・認知学者がいますが、彼の主な研究テーマの一つが感覚のイリュージョン(錯覚)です。この分野でのシェパードの最も有名な発見に、「シェパードの机」の錯視 («Shepard tables»)と、今回使用した「シェパードトーン」(«Shepard's tone»)という音のイリュージョンがあります。

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MUSIC 2020.9.17

Musical illusion

- Typewriter -

Leonid ZVOLINSKII


この曲は、タイプライター(印字機)のそれぞれの文字が二つの音を持っているというコンセプトに基づいてできています。その音の一つは、文字盤の打鍵による物理的な音で、もう一つの音とは文字盤に書かれたそれぞれの文字を示唆するセマンティック(意味論的)なものです。

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MUSIC 2021.9.30

Musical illusion

- 夏の残像 “Afterimage” -

Leonid ZVOLINSKII


本作は「瞬き(またたき)」のような効果を使って作曲されています。「瞬き」と言っても、このコンセプトでは視覚的な物の点滅ではなく、聴覚における音の瞬きです。音が鳴った瞬間に、耳に聞こえたのがどんな音だったのかをはっきりと分からなくするマジックのような音の瞬きの状態を、どのように作り出すことができるでしょうか?今回は2つの方法を挙げます。

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MUSIC 2021.9.30

Musical illusion

- Palindrome -

Leonid ZVOLINSKII


「たけやぶやけた」、「AKASAKA」のように、前から読んでも最後から読んでも同じになる言葉遊び、パリンドローム(回文)を知っていますか?今回は、言葉ではなく音楽のパリンドロームを体験してみてください。

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MUSIC 2021.9.30

Musical illusion

- Jekyll and Hyde -

Leonid ZVOLINSKII


小説「ジキル博士とハイド氏」は、一人の人間の二面性(二重人格)を描いた有名な作品ですが、今回はこの作品になぞらえて、時間知覚の錯聴効果を音楽作品にしました。一つの楽器が二つのパートのポリフォニーのように聞こえる「擬似的ポリフォニー」とは、どのようなものでしょうか。

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MUSIC 2022.7.28

Musical illusion

- The way of the ways -

Leonid ZVOLINSKII


チャイコフスキーの交響曲第6番終楽章に見られる音階のイリュージョンを、さらに多重化し、現代的に発展させるとどんな曲ができるでしょうか。

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Auditory Illusion in Music

MUSIC 2018.4.23

Auditory Illusion in Music

- [1] 錯聴(Musical illusion)とP. I. チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」Op.74 -

Risa MORIYA


音や聴覚のイリュージョンが聴覚研究の中で盛んに研究されるようになったのは、1960年代から1970年代にかけてと割と最近のことであると言えますが、音楽の中では人間の聴覚の特性を意図的に意識して作られた作品、あるいは結果として錯聴効果が生まれた音楽は古い時代からあるように思います。 今回はそうしたイリュージョンの例として、P.I.チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」(Pathetique)を取り上げます。

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MUSIC 2018.8.16

Auditory Illusion in Music

- [2] カクテルパーティとモテトゥス、そして「音楽的な耳」 -

Risa MORIYA


「音楽的な耳」を持つ、ということはどのようなことでしょうか。音楽家にとって必要不可欠な聴取の能力について、脳科学で言われるところの「カクテルパーティ効果」という切り口から考察してみます。

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Music lab

MUSIC 2021.9.24

Music lab

- [1] 音楽の色彩感(前編) Modal variations based on a Russian folksong “Kamarinskaya” -

Leonid ZVOLINSKII


私たちが音楽を聴くとき、「明るい」音楽、「暗い」音楽など、光と影、明暗、あるいは色彩感を感じます。今回は、ロシア民謡「カマリンスカヤ」の変奏曲を通して、「旋法」の構造から音楽の多彩性や色彩感について解説します。

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MUSIC 2021.9.24

Music lab

- [1] 音楽の色彩感(後編) It’s raining -

Leonid ZVOLINSKII


Music lab [1] 音楽の色彩感(前編) Modal variations based on a Russian folksong “Kamarinskaya”でお話しした旋法が演出する音の色彩感(明暗)について、今回は現代の様々なジャンルの音楽の中でどのように使われているか、どのように使えるかを見ていきます。

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MUSIC 2021.9.24

Music lab

[2]音列を変えずに音の色彩感を変える方法―フラグメンテーション

Leonid ZVOLINSKII


この記事では音の響きから生み出される色彩感を、旋法の「フラグメンテーション(断片化)」によって変化させる方法を解説します。

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